Business Informationビジネス情報


キャストグループの全貌

2009.10.28

村尾龍雄 弁護士インタビュー

日本と中国の一流の弁護士、会計士、税理士、コンサルタントが集い、国籍・性別・資格の有無、種別を問わず対等な条件の下、日中ビジネスに関する法務、会計・税務を中心とするコンサルティングの分野で活躍。各専門家が得意分野で最高のパフォーマンスを提供し、シナジー効果を発揮しながらソリューションを提供する――それがキャストグループだ。日中ビジネスが進化を続け、日系企業の法務、会計・税務に跨る解決困難な問題が増加する中で、キャストグループのプレゼンスがますます高まりを見せている。

国籍、性別、資格問わず――平等・実力主義

キャストグループCEOの村尾龍雄が、現在のキャストグループを構想したのは10年前の1999年。96年から99年まで大江橋法律事務所上海代表所の一般代表を務めた村尾は、法務の業務のみの提供で日系企業のニーズに応える限界を感じ、法務、会計・税務のすべてのサービスをワンストップで提供する企業の設立を決意した。

「法務、会計・税務のすべてのサービスをワンストップで提供し、弁護士、会計士、税理士、コンサルタントの各専門家が対等に活躍するというコンセプトは、99年8月に独立した時からのものです。こうしたコンセプトを実現した企業は当時もいまもキャストグループだけではないでしょうか」(村尾)

国籍も性別も資格の有無、種別も問わず、対等の条件で活躍するというニュートラルな組織のキャストグループでは、誰もが平等にチャンスを与えられ、成果を上げた分だけ豊かになれる。そのため、各メンバーのモチベーションは非常に高い。

「国籍や性別、資格の有無、種別が上下を決めるべきではありません。実力ある者が、成果を上げた者が評価される、本来はそうあるべきです。しかし、現実の社会では資格や国籍で上下を決めています。これを止めない限り、日中間に跨るビジネスにおいて真に強い組織を作ることはできません。こうした組織を作るには、トップがエゴを捨てることです。トップが先頭に立って見本を示し、実践することが一番の近道です。当社と同様のコンセプトを持つコンペティターが未だに現れない理由には、トップがエゴを捨てることの難しさがあるのではないでしょうか」

進出ブームを追い風に――成長路線を突き進む

99年下半期から04年までは、中国が「世界の工場」の地位を確立した時期で、日系メーカーがこぞって中国を目指した第二次進出ブームに当たる。キャストグループはこの間、「法務、会計・税務サービスをワンストップで提供する」というコンセプトが受け入れられ、数多の日系製造業の設立案件を手掛け、進出ブームの波に乗りながら成長路線を突き進んでいった。

村尾は2000年2月、コンサルティング会社のキャストコンサルティングを日本で、同年4月にその現地法人、加施徳諮詢(上海)有限公司を上海で設立。設立直後に受けた日系大手家電メーカーからの債権回収案件を解決に導き、上昇気流に乗ると、02年には弁護士法人キャストを設立し、法務、会計・税務サービスをワンストップで提供する体制を整備する。さらに、03年4月には加施徳諮詢(上海)有限公司の蘇州分公司、04年12月には北京分公司を開設した。

村尾は、キャストグループの99年から04年までを振り返り、次のように語る。

「大江橋法律事務所という大きな看板を捨て、私とふたりの秘書だけで不安を抱えての出発となりました。ところが、97年のアジア通貨危機で一度冷え込んだ日系企業の進出意欲が99年下半期から再び盛り返し、われわれは幸運にもスタートから『進出ブーム』という追い風を受けることになりました。03年にSARSが流行するなどのアクシデントはありましたが、99年から04年までは急速に業績を伸ばすことができました」

合併でキャスト糸賀を設立――企業文化共有できず…

さらなる飛躍を目指し、キャストグループが選択したのが、弁護士法人キャストと中国法務の草分け的存在である糸賀・曾我法律事務所との合併だった。05年1月、合併により弁護士法人キャスト糸賀を設立すると、同年2月に広州分公司を、07年8月には大連分公司と深?分公司を開設し、中国全土でサービスを提供する体制を構築した。また06年7月には、加施徳投資香港有限公司を設立し、日中間のM&Aに関するFA(フィナンシャル・アドバイザー)業務の強化も図っている。

合併により、それまで10人強だった日本人弁護士は中途採用の増強により3倍近くに増え、拠点も倍増。外から見ると急成長を遂げ、大成功したかに映った。しかし、村尾の心情は必ずしもそうではなかった。

「合併ではPMI(Post Merger Integration。合併後の統合)が重要だと言いますが、この問題は私を苦しめることになりました。ただでさえ違う事務所が合併して心理的統合に工夫と時間を要するのに、中途採用者、しかも中国とは無関係な業務に従事する専門家が増加すると、畢竟、大陸で稼動する専門家との心理的距離が広がり、企業文化を共有することが難しいという問題に直面することになったからです。」

提携活用した新体制へ――“最強チーム”を提供

こうした中、キャストグループは08年8月に弁護士法人キャスト糸賀を解消、弁護士法人キャストを再び設立し、新しい組織作りに動き出した。新しい組織では合併会社の反省を生かし、小さな組織ですべてのスタッフが企業文化を共有、リスクをパートナー全員でいっしょに背負う体制を志向している。この組織改革の総仕上げとして、09年11月にはグループ内に抱え込んでいた世民法律事務所を切り離し(高師坤律師、胡世民律師を中心とするチームとの提携関係は継続)、新体制へ移行した。

新体制は日本2拠点、中国大陸6拠点、香港1拠点の全9拠点で、オールスタッフで約150名となる。村尾は「新体制では心臓部を鍛えることに集中し、スタッフは余り増やしません。むしろ積極的に提携先を活用しながら、顧客の要求に合わせてベストのチームを組むようにします」と抱負を語る。

提携関係を組む際に生かされるのが、この10年でキャストグループが培ってきた中国法曹界、会計・税務業界との信頼関係だ。“日中完全平等”を実行してきたキャストグループの評判は中国でも高い。

「自社で専門家を抱え込むと、日本語能力には長けるが突出した専門分野を持たない高コスト構造の専門家ばかりの組織になるリスクがあります。一方で、本当に優秀な弁護士や会計士、税理士は、自らの組織を自らで運営しているケースがほとんどです。これまでの10年間、中国で築いてきた信頼関係のある外部の専門家を活用し、分野ごとに『知的財産チーム』『独占禁止法チーム』『アンチダンピング法チーム』『会社倒産法チーム』など、“最強チーム”を形成していきます」

キャストの事業領域――成功報酬ビジネスにも参入

村尾龍雄 弁護士インタビュー

現在のキャストグループの事業領域は、以下の4分野だ。

①法務、会計・税務を中心とするコンサルティングサービス(訴訟、仲裁等の紛争解決処理を含む)

②FA(フィナンシャル・アドバイザー)

③マッチングビジネス

④投資

「法務、会計・税務、コンサルティングサービス」は、04年までは製造業の設立案件が中心だったが、近年は現地法人のオペレーションを巡る複雑な問題にシフトしている。「例えば、保税貨物の商流、物流、金流についての問題など、法律と税法、会計が複雑に絡み合った問題が増えています。こうした難易度の高い問題こそ、キャストグループの強みが最大限に発揮できます。誰も手がつけられない高みまで自らのサービスレベルを向上し、最適なソリューションを提供するのが、キャストグループの存在意義だと認識しています」と村尾は述べる。

「FA」は、日中間のM&Aを中心とする投資に対する助言。「マッチングビジネス」では、日中のファンドに海外投資家の資金を呼び込んだり、資金を求めるメーカーなどとスポンサーをマッチングしたり、あるいは技術を求めるメーカーと技術を持つメーカーをマッチングすることを志向している。また、「投資」は加施徳投資香港有限公司を起点に、日本の企業再生案件などに自社で100万米ドル単位の投資を既に開始している。

従来型の法務、会計・税務、コンサルティングサービスに留まらず、近年FAや投資の分野へ参入し、事業を拡大している狙いについて、村尾は次のように話す。

「タイムチャージをいただく従来型のビジネスを大切にしつつ、近年は収益性を高めるため、成功報酬をいただくことのできるFAやマッチング、また自己資金を利用して確実なリターンが期待できる投資分野にも注力しています。小規模の人数で、比較的大きなリターンが見込めるビジネスに積極的に挑戦したいですね。例えば、マッチングビジネスでは、台湾のファンドが投資し、日本の企業が技術を提供、中国大陸の企業が製造し、中国で販売するようなケースをマッチングしていきたいですね」

CSR活動を積極化――障害者の就職を支援

「キャストグループは私の祖国である日本にお世話になっていることはもちろんですが、中国にも大変お世話になり、成功しました。中国への恩義を忘れたことはありません」と述べる村尾は中国でのCSR活動に積極的だ。昨年以降、身体障害者をふたり、キャストグループで雇用し、上海市における身体障害者、特に言語及び聴覚に障害を有する方々の就業促進に貢献する組織を社内で立ち上げている。来年1月からは上海市の障害者連合協会と組み、障害者雇用支援の活動を本格化する構えだ。まずは、3年以内に1000名の就職実現を目標に、中国企業や日系企業などへ、障害者雇用を呼びかけていく。

「上海市には、就職したいができない言語及び聴覚に障害を有する方々が3000人いると聞いています。私は昔から福祉に興味がありますが、われわれの現在の『身の丈』で継続的に実施できることは何かと自問した結果、これならできると決意したものがこの障害者雇用支援です。中国社会への恩返しの意味も込め、この活動を軌道に乗せ、上海市人民政府の支持及び奨励を頂戴しながら、3000人全員の就職を実現したいです。特別チームを編成し、就職を斡旋するだけでなく、就職後の状況もフォローできればと思っています。」

日中ビジネスは黄金期に――台湾の役割に注目

村尾龍雄 弁護士インタビュー

昨年の金融危機後、いち早く底を打ったかに見える中国経済。世界経済のけん引役としての期待は増していくばかりだ。こうした中、日中経済の結びつきはますます強まり、日中ビジネスは発展していくと、村尾は見ている。

「中国経済は次期政権の10年で黄金期を迎えるでしょう。これに伴い、日中ビジネスもこれまでに増して活発化していくことは間違いありません。今後、日中ビジネスにとって重要性を増すのが台湾です。台湾は現在、新政権の下、中国大陸との通信、通航、通商を厳しく規制する『三通規制』が撤廃される方向にあり、“両岸”を跨いだビジネスも大きな発展を遂げていくと思われます。こうした中、日本をよく理解している台湾が、日中ビジネスで架け橋として重要な役回りを果たすと期待しています」

キャストグループでは、先々に台湾の重要性が増すことを視野に入れ、すでに台湾の専門家との接触を始めている。「日本や中国の企業による台湾企業のM&Aや中国企業の台湾での上場サポートなどにも、今後キャストグループとして関与できるチャンスがあるかもしれません。何よりも日本と中国大陸、台湾の間で、資本と技術をマッチングするような案件を取り込んでいきたいです」と、村尾は将来のビジネスチャンスに意欲を見せる。

次の10年に向けて――存在価値増すキャストグループ

キャストグループはかつて上場を志したことがある。これについて村尾は、「上場は諦めたわけではありません。計画を見合わせたのは、社会にプラスになる上場を行うには全くの実力不足だと認識したからです。株主、クライアント、そして私を含めた社員の三者にとって継続的な金銭に限らない利益をもたらすことができると確信できれば、日本に限らない株式市場で上場したり、上場企業を買収したりする可能性は否定しませんが、現在のところ経営者としての私にも組織としてのキャストグループにもそこまでの実力はありません」と語る。

新体制の下、新たなステージに向い走り始めたキャストグループ。日中ビジネスが発展、進化し、中国の経済社会が複雑化する中、「日本と中国の専門家が国籍・性別・資格の有無、種別を問わず対等な条件の下、日中ビジネスの案件で最高のソリューションを提供する」という唯一無二のコンセプトはますます輝きを増している。

「日本と中国のスタッフが両輪となり、会計・税務を中心としたコンサルティングの分野で最高のソリューションを提供するキャストグループの強みはこれからも不変です」と村尾は力を込める。日中ビジネスにおけるキャストグループの存在価値が今後も高まっていくは間違いない。

ビジネス情報一覧へ

法務、税務、労務などについてのお悩みや疑問は
お気軽にお問い合わせください。

TOP